人たらし

7th water Lily /くぼきょうへい

流れ星

流星群が来る日、中学や高校の頃、夜中に友達と集まって飽きるまで上を向いた。好きでもない缶コーヒーのホットは、飲まれることなくポケットを温めた。自転車で僕らの通う中学校区内のグラウンドに集合した。私服と深夜が合わさっただけで、何となく、踊れそうだ。それは、明日や明後日の昼間には掘り返せない、この時間だけで完結する、この時間そのものがタイムカプセルのような心だった。円になって上を向いた。たまに3人の方に目をやるけれど、みんな上を向いていた。携帯が鳴ることは一度もなかった。携帯を見ることも一度もなかった。ただ上を向いて流れ星を待った。「あっ!」何十分もして一つ満天の星空を猫が引っ掻いたように亀裂が走る。「前見たやつよりちっちゃいなあ。」「まあまた来るやろ。」「せやな、あの辺やんな。」ポツポツ、2つ3つ、たまに赤かったりもする亀裂が力強く爪痕を残す。亀裂は現れてはすぐ消える。燃えて無くなっていく。星は、燃えて無くなっていく。消える瞬間、少し速度が落ちる星もあった。全員が二つ三つ見てからは最近のことを話しながら上を向いている。顔を合わせずにこの日にだけ話せることがあった。知りたかった、わけではなくて、お互いが知って欲しいと思っているから話す。星がさっきより明るい。永遠ではない時間と鮮明な星を台無しにしないために、街灯も携帯も見ない。ひたすらに飽きるまで上を向く。ひたすらに明けるまで上を向く。こんな時間ならばきっと僕らは今日の日を忘れずにいられる気がする。次の約束なんてない。明日学校で会っても普段通り。また流星群が来る日までこの話はしない。また流星群が来るまでこの時間は流れない。秘密にしようと言う奴なんていないのに、4人ともがここを大切にした。もう今は全員で星を見ることはないけれど、流星群が来る日には星を見に行った日を思い出している。僕はさっきTwitterで流星群が来ていると知った。窓際には捨てそびれた空の缶コーヒーが灰皿がわりになっていて、明るい空を窓から眺めている。