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ある小説を読んで思い出した話があって、、
彼女の通うジムには専属のトレーナーがいた。そのトレーナーは男の人で筋肉があって、色黒で短髪で「ギラギラ」という文字を人に変えたような風貌をしていた。していたと断言しているけれど、本当は会ったことはない。彼女伝えの情報がその男の全てで、それ以上を知ろうと思わなかったし、それで十分理解できた。
「ジムのトレーナーさ、めっちゃ合コンとかしてるらしい」
「そうなんや、元気やなあ」
「ジム経営してお金持ってるしな。○○とは大違いやね」
「俺はお金、確かにないけど」
「お金ない男とかありえへんって言うてた」
「え、なに?俺のこと言うてる?」
「いや、そう言うわけじゃないけど」
「それ以外なにがあるん?お金ない男っていうか、俺と付き合ってることありえへんって言われてるやん。だる、なんなんそいつ、てか自分それでなんて言うたん?」
「、、そうやなあぐらいで流した」
「は?なんやねんそれ。なんで知らんところで勝手にそんなん言われてなあかんねんおれ。ほんで自分なんでそれで軽く流してんの。舐めすぎやろ。ばり気悪いわ、そんなジム一生行くなよ」
「いや、そんなん無理やから、あと何回か分の契約してるし」
「そんなん知らんわ!ほんならお前いまからそいつんとこ行って自分の彼氏はそうじゃないって訂正してこい」
「もういいって、ごめん」
「ごめんちゃうねん!いまごめんとかそんなんいらんねん、そいつにちゃんと言え!訂正しろってほんまに」
「もつしつこいって、だるい」
「なんでお前がだるがんねん、うざすぎ、もうええわ」
その会話っきり、ジムの話はしなくなった。彼女はそれっきりジムにも行かなくなった。本当は少しその男を妬んでいたのかもしれないし、本当のことを言われた気がしたのかもしれないし。ただ、たった一人には味方でいてほしかったのかもしれない。