人たらし

7th water Lily /くぼきょうへい

手紙

通っていた小学校は、登下校には帽子を被らなくてはならない。赤白帽ではなくて学校のマークがプリントされた黄色い帽子だった。男の子はつばのついたキャップ型の帽子で女の子はキャップのないバケット型の帽子だった。小学生一年生から被る帽子は大きさを調節することかできなかった。高学年になるにつれて次第にみんな新しい帽子を親に購入してもらっていた。中にはつばを曲げすぎて折れてしまって、新しいものを持つ奴もいた。2年に一回あるクラス替えは心を決めるには十分の時間があった。10歳弱の年齢なのに、二年間同じクラスだった友達と離れてしまうのは人として寂しく思った。小学2年の時は縄跳びが流行り、3年ではドッチボール、4年が過ぎてからは恋バナを放課後にした。男女交えた数人で、太陽が夕日と認識できる時間まで話した。その時から言いたいこと、言えないこと、失望したりしながら、勝ったり、負けたり、譲ったり、揺すったり、「人を好きになる」ことを覚えていった。同じ教室にいなくてもすれ違うたびにドキドキした。目は見れないけど、通り過ぎてから背中を眺める時間は好きだった。クラスが変わってしまったあの子の机を友達に教えてもらって、お道具箱の中に手紙を入れた。僕は2年の時から好きだったあの子に4年になってはじめて告白をした。手紙を使って告白をした。少ししてから少年のお道具箱の中に手紙が入っていた。「私も好き」と書かれていた。その事実を数の絞った友達に話しながら、何度も手紙を読み返した。嬉しかった。もらった手紙は家の勉強机の鍵をかけることができる引き出しに閉まった。この引き出しにあるものは宝物だ。家族旅行で拾った貝殻、2年生の時のクラスの集合写真、交換ノート、プロフィール帳、ビー玉、そして手紙。

それからも彼女とすれ違うたびに、目が合うことはなかった。目を合わせたくて告白したのに、目を見ずに伝えてしまった。少年は小さくなった帽子を精一杯深く被っていた。