人たらし

7th water Lily /くぼきょうへい

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すごくだらしない日を過ごす度に、無性に寂しくなる。誰かに必要とされたいけれどそれだけの責任を全うできる覚悟がない。俺がいなくては死んでしまうかもしれない猫はどこまでいっても「誰か」にはなれない存在なのだろう。当たり障りのない会話を続けていると、本当に話したかったことを忘れていた。いや、そうじゃないかも。本当に話したかったことは、当たり障りのない話に飲み込まれていった。なんでもない日常を退屈と思ってしまうのはまだ子供なのかもしれない。どうにか面白くしたいとは思うけれど、何を面白いと思えるのだろうか。候補に上がる記憶を蘇らせるけれど、今それをしたとして、面白いと思えるのだろうか。怖い。あの時夢中だったことが今は夢中になれないなんて現実が怖い。この籠の中から見る外の世界を楽しそうだなって思うこともないけれど、だからと言って籠の中でも満足ができない。ずっと狭くてつまらない。好んで背負っている何か以外を背負いたくないのに、本当はいらないってこと、わかっているのに、捨てれないのはこの籠の中で沢山の幸せを感じた経験があるからだ。過去は、記憶は、探してもどこにもない。強いて言えば僕らはいつも自分の心に縛られているだけ おわり