人たらし

7th water Lily /くぼきょうへい

考える

考える。ずっとずっと考える。僕はまた何がいけなかったのか、何をしてきたのかを考えていた。あの日あの時あの場面で、僕は彼女にどうしてあげればよかったのか、人生を賭けるスイッチを逃していたことに今更気づく。思い出の数々から消え去っていた悲しい場面が少しずつ蘇ってくる。後悔が募る。見ないようにしていたんじゃない。見えなくなっていたんだ。

悲しみの連鎖に、孤独の増大に、気づかなかった。それは僕が気づかない間に支えられていたからだ。支えられていることにその時気づけないほど視野が狭かった。遊びも浮気も旅行も、彼女がいるから泣き笑って乗り越えられたのに。俺はただ彼女を愛していた。好きだ。その気持ちだけは誰にも負けない。そう何度も何度も思っていたし、誰よりも愛している自信があった。人に想われていることが幸せなんだよと教えるように話した。でも彼女を守る術は何も持っていなかったんだ。悲しい思い出になってしまった過去のこと、今もずっと考えている。

そしてまた気づく。きっと彼女は未来を考えている。