人たらし

7th water Lily /くぼきょうへい

正直なところ

正直なところ、本当に拘っているように見せかけているだけで、変わるのがひどく悲しいだけだ。どのジャンルにも囚われることなく、変化すること、変わること、離れること、出会うことが、ひどく悲しくて虚しい。苦手なんだと思う。新しいものに触れた時にワクワクするような高揚感や臨場感は、絶対的に失うことのない確かなものがあった時にこそ楽しめる物事であって、何もない自分で受けて立つ程恐ろしいものはない。どうしても安心がほしいけれど、どうしてもその安心を選んだりした。どうしても不安が怖いけれど、どうしても不安を手放せなかった。一体何の為に生きるのかとか、何の為に成し遂げるのかとか、そんな大きいことを語れるような人間になんて、まだまだ成れる訳がないのだ。みんな自分が一番可愛いと言うのは正しいと思う。みんながみんな自分が一番大切で可愛いんだと思う。俺だって、誰かのためにしか頑張れないと言うけれど、誰かの為に頑張る自分が好きなだけだろう。でも、自分が一番可愛いと認めるている人間と、認めない人間との差はある。正直なところ、今の自分が全然可愛くないのだ。こんなに可愛くない自分でいることに対して、自分が自分を許せないのだ。正直なところ、俺はただ誰かを愛したいだけだ。それをしていない自分がたまらなくつまらない